アパート・マンション表記のナゾ

/ J-REC公認不動産コンサルタント、宅地建物取引士

2階建て総タイル張りで見栄えの良い軽量鉄骨造の賃貸住宅を入居募集するとき、種別はアパートよりもマンションと表記した方がお客様に注目してもらえます。

しかし自由にマンションと表記することは許されていません
インターネットのお部屋探しサイトの大手9 社からなる「不動産情報サイト事業者連絡協議会」というところで統一ルールが決められているのです。

そのルールとは、
軽量鉄骨造や木造等の建物はアパート
鉄筋コンクリート造や“その他堅固な造りの建物(ここが注目ポイント)” はマンション
と定められています。

その構造は登記簿謄本の構造欄で知ることができます。
この登記簿謄本の構造が決まる順序は次のようになっています。

まず建築物が新築される前に「こういう建物を建てます」と申請をし、さらに完成後は申請どおりに建築されているか調査し、それを受けて建築確認済証が作成されます。
その確認済証を添付書類として土地家屋調査士が表示登記を行うのですが、その時に構造も決められるのです。

ここで注目したいのは、確認済証には軽量鉄骨造という種類はないということです。
つまり登記簿謄本で軽量鉄骨造と書かれる建物も確認済証では鉄骨造と書かれているのです。


では、どこから軽量鉄骨造という言葉が出でくるのでしょうか?
実は不動産登記法の規則で構造材料による区分が定められています。
しかしそこには、
木造
土蔵
石造
れんが造
コンクリートブロック造
鉄骨造
鉄筋コンクリート造
鉄骨鉄筋コンクリート造

の8 種類の区分しか記載されておらず、不動産登記のルールでは「上記区分に該当しない場合には新しい構造を登記することができる」となっています。
そしてその主なものは法務局から登記の要領が指示されており、土地家屋調査士はその指示に従って構造を登記します。
確認済証に鉄骨造と書いてあっても軽量鉄骨造と登記される場合があるのはそういう理由です。

軽量鉄骨造でも見た目は豪華なのにアパートと表記しなければならないのは残念と思いますが、反対にメリットもあります。
登記簿謄本上の構造は税金と大きな関わりがあります。
登記の際の登録免許税や毎年かかる固定資産税の計算の基準となる固定資産評価額は、謄本に記載される構造で計算が変わってきます。

鉄骨造と書かれるよりも軽量鉄骨造と書かれるほうが税金は安くなるのです。
税金を考えると登記簿謄本に軽量鉄骨造と記載したいけど、募集ではマンションと表示できる構造にしたい、というジレンマに陥ります。
理屈で考えるなら次のような方法もあるかもしれません。

規定通りに軽量鉄骨造で登記されたあとに、不動産に関する広告表示を決める公正取引協議会に、「この建物は「その他堅固な建物」に当たる構造なのでマンション表記をさせて」と働きかけるのです。
「その他堅固な建物」の定義については公正取引協議会でもはっきりとは規定されていないので、微妙なものは判断が個別対応になっているのだそうです。

実際にそのようにしているメーカーもあるかもしれません。
さて、私たちが新築物件を募集するときは登記されていませんので、建設会社に「登記は何構造になりますか?」と確認してから物件概要を作ります。
軽量鉄骨造なら迷わずにアパート表記としますが、綺麗な外観や立派なエントランスや中廊下などの写真を多く掲載して、マンションに負けない価値をアピールするようにします。
そして完成前の満室に向けて最大の努力をします。

結局はアパートやマンションという表記よりも、その物件の価値を正しく最大限に伝えることが、私たちに課された最重要職務なのです。