立退きに関する法律を知っておきましょう
立退きに至るにはいろいとな理由があると思います。
中途解約や、更新拒絶、道路拡張のための建物の取り壊し、建物老朽化のための再建築、家賃未納や騒音迷惑などの不良入居者の追い出しなどがあります。
いずれにしても、時間や費用がかかるものです。
なかでも、大家さんからの申し出による、想定していなかった立退きは、入居者にとって大変な心労を与え労力、お金もかかりますので、スムーズにいかないこともあります。
しかし大家さんが法律上の知識を備え、入居者の立場も考えて交渉を行うことでトラブルを最小限にし、スムーズな立退きを促せるようになります。
立退きに関する法律の知識と円滑な進め方について解説します。
◇ 立退きに関する法律
賃貸借契約には、「大家さん側からの賃貸借契約の解除を申し入れる場合には、半年前(6か月前)に通知すること」というルールが記載されていることが多いです。
しかし、6か月前に通知をしたからといって、問答無用で追い出せるわけではありません。
大家さんは入居者へ、あらかじめ解約の意思を口頭で伝えておいてから、解約通知書は配達証明で内容証明郵便で送り、解約申入れ日を記載しておくといいでしょう。
お伝えもなく、いきなり内容証明を送ると入居者が驚いてしまうため、事前に口頭で伝えるなどの配慮を忘れないようにしましょう。
◇ 立退きには正当事由が必要
しかし、大家さんから6ヶ月前に通知さえすれば必ず立退きを求められるわけではなく、きちんと「正当事由」が必要です。
入居者としても、立退きは引越し費用もかかりますし、新しい住居も探さなければなりません。
「はい、そうですか。」とすぐに立退きを納得しないことの方が多いでしょう。
引越し費用や、新賃借物件の初期費用は、入居者側からすれば、不要な出費です。
借地借家法は、入居者の居住権を強く保護するため、解約の申し入れ、更新拒絶には「正当な理由が必要」としているのです。
「正当事由」としては、賃貸人と賃借人が建物を必要とする事情、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び現況により判断され、さらに立退き料の提供により正当事由を補完することで最終的に判断されます。
以下の事由などは、入居者側に原因のある退去通告の理由となります。
・家賃の支払いを何度も怠っている
・住宅用に借りたのに、会社の事務所で利用している
・騒音で他の入居者に迷惑をかけている
・契約で定めた賃借人以外の人に貸している(無断転貸など)
ただし、老朽化による建替えは通常はなかなか正当事由とはみなされません。
解約申入れ時には十分注意して下さい。
◇ 立退き料の意味と妥当な額
実は、立退き料については、借地借家法や、関連法規でも金額が明示されていません。
判例を参考にすると、おおむね家賃の6ヶ月分が一般的なようです。
これは次の入居先の契約に必要な敷金や礼金などの一時金、さらに引越しの実作業といった費用程度と推測されます。
なお入居者との合意が得られれば、早期の退去や6ヶ月未満の立退き料でも良いわけです。
ですから、期間や金額よりも、むしろ入居者の立場を考えた交渉に重点をおくことが、円滑な立退きを行うポイントとなります。
円滑な立退きの進め方とは
立退きを円滑に進めるためには、入居者の立場を考えることです。
例えば、相手の都合などをなにも考慮せず「6ヶ月後に立退いて下さい」と事務的に通知するだけでは、反感を買ってしまいます。
これでは、立退き交渉はうまくいかないでしょう。
入居者の立場を考えるポイントを例示します。
◇入居者に 理由を明確に伝えましょう
立退きの理由を明確にしましょう。
老朽化した建物であれば、耐震診断を行うことで、耐震性能の低さを理由に、入居者に十分な安全性を確保した建物を提供できていない事実を伝えることができます。
耐震性に優れた住まいに移ることを促し、引越し費用についてもある程度は補償する提案を行うのも一つの方法です。
◇期限を設けて、その期限内に退去した場合、立退き料を支払う提案をする
借地借家法上6ヶ月の猶予があるのをしっかり明示したうえで、例えば3 ヶ月程度の期限を設けます。
この期限内で退去してくれれば立退き料を支払うことにするのです。
期限を3 ヶ月と決めることと、その期限を守った時に立退料を支払う約束をすることで、退去を前向きに考えてもらいましょう。
◇立退き料の支払いと明渡しの合意書を交わす
立退き期日、立退き費用の支払いなどにお互い納得したら合意書を交わします。
立退き料は、必ず退去したことを確認してから渡すようにしましょう。
先に渡してしまうと期日までに立退かずにトラブルになることがあるからです。
立退きリスクを回避する方法
定期借家契約では、立退きの費用や時間は大幅に短縮できます。
取壊しの予定が決まっている場合は、新規契約の時は必ず定期借家契約にしましょう。
取壊し予定日に合わせて賃貸借契約の終了日も揃えていきます。
入居者は退去の日程をあらかじめ知りつつ、その際の立退き料がないことも理解した上で契約しますので居座られることはまずないでしょう。
ただし、取壊し予定の決まっている物件は長期の入居ができませんので、家賃は相場より安くしなければならないでしょう。
立退きは、費用もさることながら新しい住居を探したりなど、入居者には多くの負担をかけてしまいます。
立ち退きトラブルを避けるためには、こちらの言い分だけ一方的に述べるのではなく、相手の話もよく聞き、話し合いましょう。
そしてスムーズな立退きのためにはお互いに妥協も必要です。
もしトラブルになってしまい、どう交渉を進めればよいか分からない場合は、行政に頼るのも一つの方法です。
無料の法律相談の利用なども検討されてみてはいかがでしょうか?