家賃滞納が起こってしまった・・・!時の対処法

/ J-REC公認不動産コンサルタント、宅地建物取引士

 

家賃滞納の基礎知識

 

賃貸経営にはリスクがつきものです。

しかし、実際にはアパート・マンション経営のリスクは、過去の事例から把握できるものがほとんどです。

一番の問題は、「大家さんがリスクを把握していないこと」です。

いざの時に慌てないようにこちらのコラムを参考にしてください!

 

入居者のみなさんもお忙しいですから「うっかり振込みを忘れてしまった」ということもあるでしょう。

家賃滞納の多くは支払いが一時的に遅れてしまうケースです。

単に忘れているだけならまだ良いですが、払う気があってもお金がない場合や、中には払う気がない入居者の対応には頭を抱えてしまう大家さんもいるのではないのではないでしょうか。

こういった入居者は、大家さんが何も言わないのをいいことに、さらに増長してしまう可能性があります。

滞納の理由が「収入が減ってしまった為」の場合、翌月にまとめて2カ月分の支払は期待できるでしょうか?現実、むずかしいでしょう。

滞納期間が長ければ長くなるほど全額回収するのは困難になります。

滞納家賃は、税金の計算上は損失ではなく売上滞納されている家賃は税務上の損失とはなりません。

回収できていなくてもその分の家賃は売上として計上しなくてはならないので、未収入金となり所得税の課税対象になります。

家賃の入金がなくても、賃貸借契約を締結し入居している以上、家賃収入として計上しなければなりませんので滞納家賃があるからといって、所得税などが少なくなることはないのです。

早期に正常な状態へ戻ってもらうようにする為、大家さんは毅然とした態度で臨む必要があるのです。

 

 

家賃滞納時の督促実務手順

 

滞納家賃は適切な対応を行うことで、およそ2週間程度で解決することが可能といわれています。

ここで解説する方法を参考に督促を行いましょう。

特に注意する点は情に流されないことです。

入居者の不運に同情してしまい、つい家賃の支払いを猶予してしまう…といった事態は避けましょう。

また、女性や、若い大家さんの場合は、入居者に甘く見られる傾向があります。

管理委託しているのなら管理会社や、不動産会社の協力を依頼し、対応していきましょう。

 

① 滞納1日 発覚したその日から対応しましょう

初日は、自宅や携帯電話に「お忘れではありませんか?」程度のソフトなアプローチをします。

不在の場合は留守番電話にメッセージを残します。

または、同様の内容のメモをポストに投函したり、メールを送信しましょう。

~ 2日で連絡が取れる場合は、うっかり忘れが多く、すぐに支払ってもらえる場合がほとんどです。

 

② 滞納3日目 「再連絡」

前回の連絡に反応がない場合、再度連絡を行う事と、この連絡が確実に伝わっているかを確認することが目的です。

 

③ 滞納1週間 「電話連絡」~こまめな連絡を続ける~

何度か携帯電話に連絡しても反応がない場合、状況によっては勤務先に連絡することも検討します。(※初めから勤務先にお電話は控えましょう)

この段階までくると、恐らく何かしらの事情で払えなくなってしまったことが考えられます。

たとえ相手に事情があったとしても、情に流されることなく約束を取りつけなければいけません。

必ず「いつまでに支払うか」について契約者と約束することが大切です。

期限については、「明日」や「明後日」などできるだけ小刻みに期限を切って決めましょう。

 

④ 滞納10 日目 「連帯保証人に連絡する」

連帯保証人に連絡をします。

連帯保証人に連絡するのは、代わりに家賃を払ってもらうのが目的ではありません。連帯保証人にこちらの味方となってもらい、連帯保証人から入居者に家賃を払うように連絡してもらうことです。

 

⑤ 滞納2週間 「滞納の原因が一時的なものなのか?」

 

直接自宅を訪問し、事情を伺いましょう。

例えば、勤務先の倒産で収入がなくなってしまった場合などは、次の就職先が決まっているのか、給料が入る日はいつか、金額はどのくらいかなどについて確認します。

その結果、一時的な問題であるなら、連帯保証人や家族、友人などから工面してもらうように依頼したり、滞納家賃の分割払いなどで対応するのを提案してもいいでしょう。

絶対にウヤムヤにせず、きっちりと支払い期日を設定しましょう。

もし、今後も払える見込みがないのなら、退去してもらう方向で話し合いを継続しましょう。

 

督促業務をする時に、注意するべきことは下記の三点です。

 

◇「入金期限を設けること」

◇「対応履歴を残しておくこと」 

◇「毅然とした態度で接すること」

 

そして、未納家賃の請求という正当な理由があるとしても、生活や仕事の妨げになることは禁止されていますので対応には注意しましょう。

 

家賃不払いに伴う契約解除と明け渡し請求について

 

 

 

 

滞納の原因が一時的な理由でなく、今後の良好な賃貸契約が難しい場合は、退去していただく方向で交渉します。

家族や親戚、友人宅への引越しを勧め、場合によってはその費用を大家さんが立て替えることも検討します。

「なぜ大家が引っ越しの費用負担までしなければならないのか?」

とお思いになるかもしれませんが、多少の出費をともなっても、早期退去を促し、お部屋を空けて次の入居者に入ってもらった方が損失を少なく抑えられるのです。

それでも立退き交渉が進まず、家賃滞納が3か月以上となった場合は、契約解除と明渡し請求を検討しましょう。

退去の約束を取り付けても、実際、入居者が滞納家賃をいつまでも支払わず、部屋も明渡してもらえないのでは意味がありません。

しかも大家さんや管理会社が強制的に入居者の家財道具を勝手に搬出したり、入居者が部屋の中に入れないように鍵を新しいものに交換するなどは不法行為となってしまい、入居者から訴えられてしまうこともあります。

家賃滞納の原因が一時的な理由ではなく解決が困難な場合は、引越し代の立替えなど、多少の支出をともなっても退去を促し、早期に対応して被害を最小に留めるようにすることが大切です。

 

滞納家賃の請求

滞納家賃や引越し代の立替え金の強制執行を受けるための手続きは、内容によっては弁護士だけではなく、司法書士や行政書士でも対応できます。費用は数万円程度です。

 

建物の明渡し請求

入居者の協力が得られない場合は明渡し訴訟を行うことになるのですが、これは裁判による判決が下りてから強制執行を行います。

完全に明渡しを受けるには、目安としての期間は準備から解決までおよそ1年、費用も100万円程度かかります。

その間は滞納がさらに増える可能性が高いため、早めに法的手続きを踏んだ方が良いですね。

このように、いざという時、大家さんが必要手続き、流れを知っているとリスクを軽減できるのです。