近年、賃貸物件の空室が増えているという現状があります。
今回こちらでは、具体的にはどういう状況なのかを紹介いたします。
< 人口は減・賃貸住宅の新築着工数は増 >
国立社会保障・人口問題研究所調査の結果で、2010年の人口は「約1億2千万人」でしたが、2030年には「約1億700万人」、2050年には1億人を下回ってしまい「約9,700万人」にまで減少し、今後は人口の減少が加速すると予測されています。
一方、賃貸住宅の新築着工数はというと、2010年には「約29万戸」だったのが、2013年には約37万戸と増加傾向にあり、真逆の状況が起こっています。
新築物件は“新しい”というだけで入居者獲得が容易になり空室化が避けられるのですが、築年数の経過している賃貸物件をお持ちの大家さんにとっては同じエリアに新築が増えてしまうと入居者獲得に苦戦を強いられることになります。
人口は減少し、新築物件は増えている。中でも、賃貸物件の最大の利用者層である20代~30代の若者の減少が著しいと言われており、そういった状況が既存賃貸物件の空室化の一因になっているといえます。
< 賃貸物件の約2割が空室 >
上記で説明したように、今後空室率は更に拡大していくことが予想されます。
数年前に総務省から発表された住宅・土地統計調査によると「全国に2274万戸ある賃貸住宅のうち約430万戸が空室」(2014年現在)とされています。
上記より、賃貸物件の空室率は約19%となり、もちろん地域やエリアにもよって差はありますが、だいたい5部屋のうち1部屋(2割)は空室という計算になります。
空室物件を放置するとどうなる?
「空室対策をしなくては」もしくは「空室対策をしたい」、「でも何をすべきかわからない」と、実際に行動を起こせていない方が多いのが事実です。
ただ、空室状態を放っておけばおくほど大家さんが目の当たりにする問題や負担はどんどん大きくなっていきます。
< 空室期間が長引くほど利益に影響が>
空室では家賃収入が入りません。これは当然の事です。
入居者がいれば本来入ってくるはずの家賃が入ってこないとなると、8万円の物件で12カ月間の空室が続いた場合、単純に1年間で96万円もの収入が確保できないことになります。
半年~1年で済めば良いですが、こうなってしまったら出来る限り早めに対応を取らないといけません。
< 空室が長期化すると設備が傷む >
長期間の空室で大家さんが困ってしまう問題のまず1つ目に「水回りのトラブル」があり、キッチンやお風呂、特にトイレにトラブルが出やすいようです。
給排水管内内の水が干上がってしまうことで壁内の配管などに劣化が生じ漏水事故につながるリスクも。
トイレや排水管の水が干上がってしまうと下水の臭いが上がってきてしまうため、せっかくの内覧者に対しても悪い印象を与え、近くの入居者の方にご迷惑となる可能性もあります。
<建物全体の印象・価値が下がる>
空室が続いている集合住宅でよく目にするのが「ポストのチラシの山」「ポストがガムテープでふさがれている」など。
部屋数のうち半数にも満たない戸数であればさほど目立ちませんが、半分近くがその状態で放置されていては、「こんなに空室があるのは何かあるのか?」「ちゃんと管理されていないのかな?」と、内覧に来たお客様を始め周囲の住民の方々にも悪い印象を与えてしまいます。
このように、退去者が出て次の入居が決まらない場合、早い時点で危機意識を持たずにそれを放置してしまうと、さらに退去者が続いて年月が経ってしまい、住宅全体の価値を下げる事につながりかねないのです。
空室解消のためのポイント
ー①ー 敷金・礼金を下げる
「家賃を安くすれば借りてもらえるかも…」と考える方もいらっしゃると思いますが、長い目でみた場合に家賃を下げることはあまりおすすめできません。(※物件を売却する際の評価に影響します)
空室がなかなか埋まらないときは、まずは敷金礼金を下げてみることを検討してはいかがでしょうか。
物件を探している入居者の立場からすると、引っ越しや家具・家電の新調などで出費が嵩む中、敷金・礼金も捻出することは決して楽なものではありません。
そんな中での敷金や礼金が無料というポイントはとても魅力的で、競合物件との比較に大きなポイントとなるのは確実です。
ー②ー 他物件との差別化
駅近など、周辺に競合となる賃貸物件が多数あるエリアでは、他物件と差別化を図れると良いですね。
例えば、
・オートロック、2階もシャッター付き、などの防犯設備
・入居者専用ゴミ出しボックス
・ペット・楽器可
・フリーインターネット
など、同じ家賃の物件でも上記のような仕様の物件とそうでない物件であればどちらを選ぶか。
入居者から見た目線で何かをプラスできると、入居者に選ばれやすい物件になります。
ー③ー 入居者の範囲を広くする
近年、日本国内に住んでいる外国籍の人は増加傾向にあります。
中でも、勉強をするために日本に来ている「外国人留学生」の数は年々増えていると言われ、外国の方はお断りをしている大家さんも多いと思いますが、外国の方の入居も視野に入れて入居募集行う事も空室解消には有効な手段だと思います。
ただ、外国の方を受け入れることは、文化の違いや言葉が通じないことからトラブルが発生する懸念もあります。
労力と手間はかかりますが、入居前に契約内容やルールをしっかり説明し同意を得ることを徹底し、保証会社の審査が通るかどうかや日本語の理解力など、一定の入居基準を設けることをおすすめします。