入居者の多様化 ◇高齢者 その2◇

/ J-REC公認不動産コンサルタント、宅地建物取引士

高齢の入居者さま、大家さん、両方の安心のためのサービスについて

 

 

高齢の方お一人での賃貸入居は、ご本人にとっても大家さんにとっても様々な不安やリスクを感じるものです。

そんな双方の不安を軽減するための制度を自治体や民間業者が提供をしています。

その1つに【財団法人東京都防災・建築まちづくりセンター】が「安心居住制度」という、高齢者入居を支援するための制度を設けています。

こちらでは、入居者さまが一定の費用を負担することで高齢者の単身入居に多い“3つのリスク”に対応してくれるサービスです。

 

<サービスその1:見守りサービス>

生活リズムセンサーが入居者さまに一定時間反応がない場合に異変を感知し、自動的にセンターに通報されるシステムや、自宅内で緊急時に押すだけでスタッフが駆け付けてくれる専用通報機/携帯用ペンダントを利用できます。

 

<サービスその2:葬儀サービス>

一定の預かり金を納めることで、万が一入居者さまが亡くなった場合に規定の範囲内で葬儀を行ってくれるサービスです。

葬儀後、遺族の方が遺骨を引き取れない場合は「東京福祉会」の納骨堂に一定期間保管後、「慰霊堂」に合祀され、こちらの別途費用はかかりません。

 

<サービスその3:残存家財の片付けサービス>

一定の預かり金を納めることで、入居者さまがお亡くなりになった際の室内の家財(貴重品を除く)の片付けサービスが利用できます。

 

(詳しくは下記URLよりどうぞ)

https://www.tokyo-machidukuri.or.jp/sumai/anshin.html

 

こういったサービスに加入いただくことで、万が一の事態に大家さん・入居者さま双方の負担が軽くなり、安心して入居いただくことができるようになりますので、ご検討ください。

 

 

高齢者向けの設備の種類と設備導入時の注意点

 

 

高齢者向け設備の種類

高齢者の方向けに改修されることの多い設備について、いくつかの例をご紹介いたします。

 

1)手すり

手すりは、本来利用する方それぞれの身体機能に応じて必要な箇所に取り付けることが好ましく、どこにでも取付ければ良いというものではありませんので、入居者さまと相談しながら検討が必要です。

また、取付の不具合により、横転などの事故が起こらないよう、施工業者選びも重要です。

 

2)回転灯つき呼び出しインターホン

耳が聞こえづらい場合、インターホンの呼び出し音に気付かないことがあり、何か問題が発生し入居者を訪問した際に気付いてもらえない可能性があります。

そのような場合は、インターホンの音と連動して回転灯が点灯し来訪を知らせる設備があり、こちらが便利です。

 

3)緊急通報装置

急病や事故など、万が一の場合にボタンを押すだけで身内や大家さんに通知がいくシステムです。

目次1でご紹介した「安心居住制度」と同様のサービスとなり、多くの民間業者が様々なプランでサービスを提供しています。

 

設備導入時の注意点

入居時点では特に支障がないと判断し住み始めたとしても、後々に不都合が生じ設備の改修希望が出ることもあります。

その際は下記3つのポイントを踏まえて設備導入・改修の判断をするようにしましょう。

 

1)費用負担=原則入居者

現時点で必要だとしても次の入居者に必要とは限らないため、「特定の入居者(現入居者)」に必要な設備として、原則入居者負担とします。

ですが、もし高齢者の入居を積極的に受け入れていく計画がある場合は大家さん側で負担し、家賃・管理費等を調整していきましょう。

 

2)原状回復ができる範囲内の設備で検討

こちらも、今後高齢者入居を積極的に進める予定が特にない場合は、次の入居者に必要とは限らないため、原則として退居時に原状回復できる範囲内で許可をするようにしましょう。

 

3)共用部の改修は他の入居者さまにとってもプラスになるかどうか

原状回復ができ、他の入居者さまに不都合のない改修であれば改修を進める上で問題はありませんが、原状回復が困難かつ、大家さんの費用負担となるような改修については、他の入居者さまにとってもプラスの価値があるかどうかを慎重に見極める必要があります。

 

 

高齢者入居の際の募集ノウハウ

 

「高齢者入居」に関しては、少なからずリスクはあってもそのリスクを軽減する・未然に防ぐための策もあることを前回コラムから続いてご紹介してきました。

こちらでは、実際に募集をかける際のポイントをご紹介します。

 

1)管理会社へ相談

大家さんの意思だけではなく、管理会社の協力は不可欠です。

管理会社へ相談をしながら「高齢者入居の基準書」を作成し、高齢者入居に対する方向性の共有をしましょう。

 

2)高齢者向けオリジナルのマイソクを作成

通常のマイソクの一部に「高齢者可」と記載する方法もありますが、より積極的に募集をかけたい場合は“高齢者向け”であることを全面に打ち出したマイソクも別途作成する方法をお勧めします。

高齢者の方にとって魅力的な「見守り/緊急通報サービス付き」や「手すりの設置可(原状回復が原則)」など。

作成の手間は掛かりますが、高齢者の方の目に留まる可能性が高くなりますので有効です。

 

最終的に入居基準書と併せて入居審査をしていくなかで、あまりにも懸念されるような状況ではお断りせざるを得ないケースもあると思います。

ですが、許容できる範囲であれば入居条件を追加するなど、管理会社と相談しながら受入を検討してみてください。