未払賃料が発生し、契約者に請求ができずに保証人に請求をすることになるケースもあるかと思いますが、なかには、保証人が生存している通常ケースとは違い、死亡していることもあります。
今回こちらでは、そういった場合に、連帯保証人の相続人となっている人に対し、その未払賃料の請求が可能なのかどうかについてご紹介したいと思います。
今回のトラブル・質問内容
貸主であるXさんは、借主のYさんとの間で賃貸借契約を締結。
そしてその際、借主Yさんの連帯保証人となるAさんとの間でも連帯保証人契約を締結しましたが、その後に連帯保証人であるAさんは死亡しました。
その後4カ月ほど経過した頃から借主であるYさんは賃料を滞納し始め、滞納額がすでに6ヶ月分に達しました。
そこで、貸主Xさんは連帯保証人であるAさんの“相続人”に対して、未払の賃料の請求をしたいと考えましたが、実際に、亡くなった連帯保証人Aさんの相続人に対して未払賃料の請求は可能なのでしょうか。
気になる結論について、次の目次でご紹介していきます。
結論
◇貸主Xさんは、連帯保証人Aさんの相続人に対し未払賃料を請求することができるでしょう
今回のケースでは、次にご紹介する2つの点が問題となってきます。
①賃貸借契約における連帯保証人が死亡した場合、連帯保証人の相続人は“連帯保証債務”を承継するのかどうか
②相続人が連帯保証債務を承継するとしても。連帯保証人が死亡した後に生じた、借主の未払賃料債務についてまでも連帯保証人の相続人が責任を負わなければならないのか
という点についてです。
②が問題となるのは、将来発生する債務を対象とした責任限度額や保証期間の定めのない連帯保証契約は、保証責任の範囲が極めて広範となる危険性があり、相続人に対し過大な負担を強いる可能性があるため、“保証責任は保証人本人の身に属するものとして、保証人の相続人は責任を負担しない”と考える必要性があるからです。
そこで、今回のような事例では、その辺りが一体どう判断されるのかを同様のケースの裁判事例では…
【①の点において『主債務の履行を確保するという保証債務の趣旨に照らせば、保証人の死亡により保証債務が当然消滅するとしてしまうと、その趣旨が没却されてしまうこと、及び、実務上も保証債務一般の相続性が肯定されていることを根拠に、相続人は連帯保証債務を承継すると判断』『②の点においては、賃貸借契約において保証の対象となる債務は、賃料支払債務、賃料相当損害金支払債務等であり、対象となる債務の発生原因や金額は予測可能な限定的なものであり、保証期間の定めもあることから、保証責任の範囲が無限定で広範であるとはいえない』として、相続人は連帯保証人死亡後に発生した未払賃料債務を承継すると判断した上で、連帯保証人が死亡した後4カ月経過頃から発生した未払賃料約6ヶ月分について、連帯保証人の相続人に対する請求を認める】
と判断した事例があります。(平成22年1月28日東京地裁)
こちらの事例より、今回のケースにおいても、「貸主であるXさんは、連帯保証人Aさんの相続人に対し、Aさんが亡くなった後に発生した未払賃料を請求することができる」と考えられます。
今回のようなトラブルを回避するためのアドバイス
今回ご紹介した内容の通り、賃貸借契約締結の際に、連帯保証人との間で連帯保証契約を締結した場合、貸主は連帯保証人が亡くなった後に発生した未払賃料についても、連帯保証人の相続人に対して請求をする事が可能です。
ですが、今回のケースでは、滞納賃料が過大な額ではなく(約6か月分)であり、連帯保証人が死亡した後、賃貸借契約の更新は1回に留まっているという状況のもと、借主の連帯保証人の相続人に対する請求が認められたという点が大きなポイントであり、注意が必要です。
例えばですが、滞納賃料が過大な金額となるまで連帯保証人または、連帯保証人の相続人に対し連絡を取らず通知をしていなかった場合や、連帯保証人が死亡後、賃料未払の状況のもとで何度も契約更新がされていたような場合には、連帯保証人の責任が否定されることがありますので気を付けなければなりませんし、貸主である大家さんとしては、賃料の未払が過大になる前に連帯保証人または連帯保証人の相続人に対し請求の動きをとることが大切です。
また、連帯保証人の相続人は、被相続人が連帯保証をしている事実自体を知らない場合もあります。
その点において、貸主さん側は特に、賃料の延滞が発生しているような状況下では、躊躇なく事実を通知することを忘れずに対応にあたることが非常に大切になってきます。
しかし、どの段階でどのように通知をすればよいかなどの判断が難しいケースもあると思います。
そのような時は、ぜひ当社にご相談いただければ最適なアドバイスをさせていただきますので、お気軽にご相談ください。